【珈琲豆品種大全】知られざる珈琲豆の系譜
【珈琲豆品種大全】知られざる珈琲豆の系譜
「この豆はブルボンの血を引く」
「ゲイシャ……その名は聞けど、いかなる違いがあるのか?」
珈琲を嗜む者なら一度は耳にする“品種”の名。
されど、我らが一杯を決めるのは品種だけではなく、焙煎の炎、挽きの細かさ、水の加護……数多の要素が重なりあってこそ。
それでも、品種の“系譜”を知ることは旅をより豊かにし、杯に込められた物語を深めるだろう。
1. 第一豆 品種はどこまで味を決めるか
珈琲の香味は、焙煎・挽き・淹れ方に大きく揺らぐ。
さらに大地の高さ、土壌の性質、天候、精製の術──あらゆる因子に左右される。
だがそれでも、品種ごとに刻まれた“傾向”は存在する。
ブルボンは甘みと丸み、ゲイシャは華やかにして紅茶を思わせる風。
絶対ではないが、知る者はより深く味を感じ取ることができるのだ。
第二豆 原種と系譜のはじまり
コーヒーには大きく分けて3つの原種があります。
- アラビカ種──世界生産の大半を占め、繊細で高貴。
- ロブスタ種──病に強く、苦味と力強さを宿す。
- リベリカ種──稀少にして流通わずか。
とりわけ我らが嗜むスペシャルティ珈琲のほとんどはアラビカ種なり。
そこから幾重もの交配と突然変異を経て、ティピカ系とブルボン系という二大流派が枝分かれし、無数の子孫を生んだ。
第三豆 名を馳せる品種たち
● ティピカ種(Typica)
アラビカの祖。生産性は低く病に弱いが、繊細で透明感ある味わいを宿す。いまや希少な古き血統。
● ブルボン種(Bourbon)
ティピカの変異から生まれ、甘み豊かでまろやか。安定した“外さぬ美味”として多くの地で愛される。
● カトゥーラ種(Caturra)
ブルボンの突然変異。樹は小柄で収穫しやすく、量を稼ぐに優れる。風味は控えめで、商業用にも広く用いられる
● カトゥアイ種(Catuai)
カトゥーラとムンドノーボの交配種。病や風に耐え、バランス良し。ブレンドの要となること多し。
● ゲイシャ種(Geisha)
エチオピアの山より生まれ、パナマで花開いた品種。
ジャスミンや紅茶を思わせる華やぎを持ち、高値で取引される象徴的存在。繊細ゆえ、育つ地により大きくその表情を変える。
第四豆 品種だけでは語れぬ真実
どれほど血統が優れていても、大地と気候に恵まれねば真価を発揮せぬ。
さらに収穫後の精製法、焙煎の火加減、淹れ手の技によっても味は変容する。
同じゲイシャであっても──
「ナチュラル精製の浅煎り」と「ウォッシュドの中深煎り」では、香りも余韻もまるで異なる。
これこそ珈琲の不可思議。
品種を知り、同時にその不確かさを愉しむことが、杯にさらなる深みを与えるのだ。
🏰まとめ:品種は“探求の愉しみ”。一杯に宿る物語を味わうべし
珈琲の品種とは、王国の紋章のように「これこそが絶対の旨さ」と定めるものにあらず。
しかし、ある豆の風味に触れたとき――「この味は、いかなる大地と血統の物語を背負っているのだろうか?」と胸を躍る手がかりとなるものなり。
ただ産地の名を知るだけでなく、その土地に根づいた品種の伝承や特徴を紐解けば、日々の一杯はより深遠に、より楽しく味わえる冒険へと姿を変えるであろう。
わが商館でも、稀にゲイシャ種といった名高き血統の豆を仕入れ、お客人に供することもあり。
品種の名に耳を澄ませ、豆を選んでみれば――いつもの珈琲選びも、小さな旅路や発見の冒険譚となるやもしれぬ。
つづけて、豆の章 第三話:【珈琲豆の素顔を暴く三つの儀式】─その味の源、精霊の試練にあり を読む
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